
長男は中学3年生になり、先日、進路希望調査を受けたそうです。
――「そうです」というのは、その調査はすでに数ヶ月前に終わっていて、私たちがその事実を知ったのは、だいぶ後になってからだったから。
長男に聞いてみると、
「うん、希望調査があったから、希望書いて提出したよ。」
とのこと。
進路に手厚い学校
長男の通う中学では、理系コースは文科省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)、国際コースは同じく文科省のスーパーグローバルハイスクール(SGH)に指定されています。
話を聞く限り、どちらのコースも内容が非常に充実しており、未来の活躍を見据えて、授業や体験プログラムにかなり力を入れているようです。
長男も入学当初は「SSHに入りたいな。なんかかっこいいから。」と言っていました。
ただ、これらのコースは成績順で希望が通る仕組みになっていて、特にSSHは一番人気のコース。入学以来成績が下降の一途を辿っていた長男にとっては、だいぶ厳しそうです。
担任の先生からは、「長男くんは英語が得意だし、海外経験もあるから、SGHが合っているかも」と勧められていました。
そして彼の選んだコースは
「何のコースにしたの?」
と尋ねると、
「普通のコースにしたよ。」
との返事。
――希望が通らなくても、SSHかSGHか、どちらか出しておけばよかったのに。
私は少し残念な気持ちになりました。
でも、彼なりの理由があるのかもしれないと思い、「どうして普通コースにしたの?」と聞いてみました。
返ってきた答えは、
「友達がそこに行くから。」
友達で進路を選ぶ?
「友達?」
思わず聞き返すと、
「うん。あと、SSHの授業聞いたけどあまり興味がなかったし、SGHは高3までクラス替えがないんだって。嫌な人がクラスにいたら困るじゃん。」
それ以上の(ポジティブな)理由は、特にないようです。
両親の学生時代とは真逆の考え
その時思い出したのは、私が子どもの頃に見たサッカーアニメ。
主人公(だったかな?)は有名なチームにスカウトされるけれど、「友達と一緒にプレーしたい」という理由で断り、地元に戻る。最後は友達と笑顔で肩を組んで――というシーンでした。
当時の私は納得がいかず、「全国や世界には強い人がたくさんいて、もっと自分を強くできるのに、友達を理由にチャンスを逃しちゃだめ!」と母に力説していたのを覚えています。
そんなマインドで育った私は、常に「将来のためになるかどうか」を基準に、自分の学校や進路を選んできました。
夫も同じタイプで、自分が成長できる場所を求めて、常に選択してきた人です。
私たちは、厳しくて臨床経験が積めると評判の病院で出会い、結婚後は「人が2〜3ヶ月で入れ替わる」と噂されるほどハードなラボに留学し、時に鬱のようになりながらも、最後まで働き抜きました。
そんな私たちにとって、「友達で進路を選ぶ」という発想を持った事は、今までありませんでした。
そんな選択もアリ、なのかも
でも、最近ふと思うことがあります。
私の周りには、「小学校の頃からずっと仲良しで、大人になってもよく一緒に遊ぶ友達」を持つ人たちがいます。
私自身は、進路を友達で選んでこなかった分、小中学校の友人の中で、今でも連絡を取り合っている人は、ごくわずか。
昔からの友達と良い関係を続け、人生を豊かにしている人たちを見ると、少し羨ましい気持ちにもなります。
おそらく長男は、私たちの遺伝子を受け継ぎながらも、私たちにはなかった柔らかさや、人との距離感のうまさを持って生まれてきたのかもしれません。
……まあ、「あまり深く考えていない」だけかもしれませんが。
でも、「友達との時間を大事にする」というその選択の先に、どんな景色があるのか …… これからも楽しみに見守っていけたらいいな、と思いました。