
先日、「ありがとう」の効果について考察しましたが、
ある日、小学校の遠足でお弁当が必要となった長女(小6)と次男(小3)。 その前日、私が食器を洗っていると、次男が声をかけました。 「お母さん、明日のお弁当、忘れんといてや!」 言い方で印象が変わる「頼み事」 彼は笑顔で、 …
我が家には、この「ありがとう」を、とても上手に使う人物がいます……長男(中2)です。
説教されることが多い長男
長男はこれまで、私達両親から数多くの注意を受けてきました。
特に、根性論が好きな夫は、勉強をしなかったり、将来の目標が定まらなかったりする長男の言動が気に食わず、すぐに説教をしてしまいます。
その日の夕食時も、長男の「将来はレアポケカを転売して大金持ちになる」という発言をトリガーにして、夫が人生を語り始めました。
「……であるから……長男くんみたいな考えでは……」
一度話し出すと延々と続く、夫の説教。他の人に口を挟む余裕を与えません。
一方、人の話を長々と聞くことのできない長男は、説教開始から数分で目が泳ぎ始め、心が別のところに行ってしまっているように見えました。
―― あー、これは聞いてないわ。
私は、どんどんヒートアップする夫と、視線を宙に浮かせたままの長男を交互に見やりながら、ツッコミを入れていました。
聞いてる!?
そんなこんなで10分程経過した頃、さすがの夫も長男が全く聞いていないことに気づきました。
「……って、長男くん、聞いてる!?」
長男は、ハッと我に返り、
「うん、聞いてるよ。」
と答えました。
けれども、夫は
「いや、聞いたとしても、全く考えていないでしょ!?お父さんの話聞いて、何か自分の意見とか考えとか言ってみてよ。」
と更に追い打ちをかけました。
―― あんなふうに一方的に責め立てられて、不快に思わない子はいないでしょ。しかも、明らかに聞いてなかったし。彼がまともに返事するとは思えないけど。
と、私が心のなかで再びツッコミを入れていると、
「えー。えーと……僕のこと色々と考えてくれて、ありがとう。」
彼は、苛立ったり、皮肉めいたりすることなく、極めて柔らかな口調で感謝の言葉を述べました。
「お、おう……そうか。わかった。」
ヒートアップしていた夫も、やんわりとした彼の感謝の言葉に、完全に拍子抜けし、それ以上なにも言いませんでした。
相手の怒り(?)も鎮める「ありがとう」
普通、中学生が、自分の何気ない一言をトリガーにして親から延々と説教をされたら、「もう、放っといてよ!」と言って席を立ち、自分の部屋に籠もってしまうかもしれません。
けれども彼の口から出た言葉は、意外にも「ありがとう」でした。
しかもその口調はとても柔らかく、昂っていた夫の感情を、丸ごと吸収してしまいました。
―― いやー、この状況でこんなふうに「ありがとう」って言えるなんて……私には無理かも。
でも、これができるようになれば、仕事でもかなり有効なツールとなるでしょう。
私も長男を見習って、是非ともこのスキルを習得したいところです。